マリコスト・ルーム倉田まり子




作品世界




原作は1978年から1980年にかけて小学館「少年サンデー」に連載された。後の「みゆき」や「タッチ」などのあだち充
代表作のスタイルの原点ともいえる作品である。


ナイン




1983年5月4日フジテレビにて放映


日生ファミリースペシャル


73分



原作 あだち充


脚本 布施博一


監督 杉井ギサブロー


音楽 芹澤廣明


オープニング・テーマ


LOVE・イノセント


挿入歌


つのる思い


悲しみにサヨナラ


エンディング・テーマ


真夏のランナー





製作


東宝株式会社


グループ・タック


フジテレビ





声の出演


中尾百合    石原真理子


新見克也    古谷  徹


唐沢  進    富山 敬


倉橋永二    塩沢兼人


安田雪美    坂本千夏


山中健太郎   神谷 明


監督・中尾   永井一郎


克也の父    仁内建之


克也の母    牧野和子


倉橋の父    青野 武


雪美の祖母   麻生美代子





物語


ナイン・オリジナル版の項を参照





レビュー


主題歌の「LOVE・イノセント」を改めて聞くと、作曲者は違うのだがデビュー曲の「グラジュエイション」を彷彿とさせるも
のがある。





ヒロイン・中尾百合の声はどちらかというと、この作品の石原真理子氏や「完結編」の安田成美氏の方が普通の高校生
っぽさが感じられる。





このTV版のみ未ソフト化で、TVの再放送でしか見ることが出来ない。


(再放送から「ナイン1」と呼称する場合あり)








ナイン・オリジナル版




1983年9月16日劇場公開(同時上映「みゆき」)


71分





原作 あだち充


脚本 布施博一


監督 杉井ギサブロー


音楽 芹澤廣明、槌田靖識


オープニング・テーマ


青いフォトグラフ


挿入歌


愛を翼にして


つのる思い


涙色の季節


エンディング・テーマ


真夏のランナー





製作


東宝株式会社


グループ・タック


フジテレビ


配給


東宝株式会社





声の出演


中尾百合    倉田まり子


新見克也    古谷  徹


唐沢  進    富山 敬


倉橋永二    塩沢兼人


安田雪美    坂本千夏


山中健太郎   神谷 明


監督・中尾   北村弘一


克也の父    増岡 弘


克也の母    牧野和子


倉橋の父    青野 武


雪美の祖母   麻生美代子





物語


青秀高校の新入生・新見克也は、友人の唐沢進とともに生まれて初めて野球部に入る。それは連戦連敗の青秀高校
の試合を見た日、ネット裏で涙していた監督の娘・中尾百合を見、何とか勝って百合を喜ばせたいと思ったからだ。や
がて、中学野球の優勝投手の倉橋永二も親の反対を押し切って入部、青秀は念願の1勝をあげる。百合の笑顔をみ
ながら、克也は今度は自分の活躍で、その笑顔をみたいと思う。そこへ武南高校の甲子園投手・山中健太郎が登場。
百合の幼馴染みというが、彼が百合を恋人にと考えているようで、克也の心中は穏やかではない。





同じ頃、克也に積極的にアタックする安田雪美が現われ、克也もまんざらでもない思い。百合もまた雪美と一緒にいる
克也を見て落ち着かない。二人ともお互いが好きだが、奇妙な四角関係ができてしまった。





甲子園地区予戦で青秀は武南に負ける。夏休み。8月20日は百合の誕生日であり、甲子園の決勝戦の日でもあっ
た。武南は健太郎の活躍で優勝し、健太郎はテレビを通して百合に誕生日おめでとうを言う。ヒーローである彼と我が
身を比べて複雑な心境の克也。しかし、克也は自宅から電話で、勇気をもって百合に「おめでとう」を言う。それが健太
郎のお祝いより、一番嬉しいお祝いの言葉だったという百合の返答に、克也は世界一幸福なフツーの高校生になっ
た。





レビュー


TV版をグレードアップした劇場版であるが、細かい作画のリテイクやヒロイン・中尾百合の声はもちろん、BGMが槌田
靖識により殆ど変わり、作品としては半分以上新しい気分で見ることが出来る。製作者は映画化にあたって、新エピソ
ードを盛り込みたかったらしいのだが、時間その他の制約でストーリーについては同じものにせざるを得なかったそうで
ある。





主題歌の「青いフォトグラフ」はTV版の「LOVE・イノセント」に比べアップテンポな曲なのだが、エンディングの「真夏の
ランナー」と少しダブって聞こえる印象だ。





テレビ版との違いは以下に述べているが、私が気になったシーンはラストシーン近くでテレビの山中健太郎のヒーロー
インタビューを見て、敗北感にさいなまれた克也が街を歩くシーンでパチンコ店が映るのだが、TV版は店の外観のみ
だが、劇場版はパチンコ台も映っているので、克也君はひと勝負したのかな?気になります、未成年だからね(笑)。





プロデューサーには、このオリジナル版のあと三部作を劇場でかけられたらという夢もあったらしいが、ヒロインの声が
結果的にバラバラになってしまったから・・・





テレビ版との違い


@新作・修正カットが約13分間分ある。


・中尾百合の新作カットがとても多い。


・TV版でミスと思われるシーンが修正・変更されている(以下代表的な例)。


  a:倉橋と百合が夜話しながら歩くシーンで、口パクしているのに台詞が無いシーンを修正。


  b:山中健太郎と百合が会うシーンで、百合の赤いセーターの右肩の白いラインを書き忘れ


ている部分を修正。


  c:なんと定期入れの山中健太郎の写真が変更されている(ミスではないが・・・)。


  d:飛行機雲なんかも修正されていて、細かいところまで気を配っていることに感心。





ATV版より上映時間が約2分程度短い。


・主として新見克也と唐沢進の掛け合いのシーンが短くなっている。





B中尾百合役が倉田まり子になった以外に数人のキャラクターが別の声優になっている。


・百合の父親(監督)、克也の父親など。





Cオープニングの主題歌および画面の変更。


・劇場版では百合と克也の恋愛感情を強調した画面になっている。





DBGMが槌田靖識によって新たに作曲されている。


・音響監督がTV版の音楽集のライナーで「電気的なサウンドよりもアコースティックサウンドにより、ある時はしっとり
と、ある時は豪華な表現ができれば『ナイン』の音楽は理想的ではないかと思っている」と述べている点からして、BGM
を変える試みがされたと思われる。結果、情緒的なシーンは、より強調された印象がある。





ETV版では歌が被って台詞が消えていたところが復活している。


・克也が雪美の短距離走をコーチする場面。


歌:「つのる想い(倉田まり子)」





・武南との試合終了から克也の足の捻挫を百合が治療する場面。


歌:「真夏のランナー(芹澤廣明)」








ナイン2・恋人宣言




1983年12月18日フジテレビにて放映


日生ファミリースペシャル


67分





原作 あだち充


脚本 白山 進


監督 杉井ギサブロー


音楽 芹澤廣明





オープニング・テーマ


恋人宣言


挿入歌


青空気分


私のYong Boy


エンディング・テーマ


真夏のランナー





声の出演


中尾百合    倉田まり子


新見克也    古谷  徹


唐沢  進     富山 敬


倉橋永二    塩沢兼人


安田雪美    坂本千夏


山中健太郎   神谷 明


山中二郎    平野義和


監督・中尾    北村弘一


雪美の祖母   麻生美代子





物語


青秀高校文化祭。秋晴れのこの日、みんな楽しそうな顔だ。校庭の片隅の銀杏の下で寄り添う百合と健太郎を目撃し
た克也。あわてて走り去る克也に百合は声をかけるが、届かなかった。





冬が去り、桜が満開の新学期。花の高校2年生となった唐沢進、倉橋永二、新見克也、そして中尾百合、おまけに安
田雪美も再び同じクラスになった。ところが、野球部に入部してきた山中健太郎の弟が雪美に一目惚れ。恋の糸は絡
みに絡んでドラマチックな一年間が始まる。





梅雨。克也に積極的に恋のアタックをする雪美。克也に対する自分の気持ちを言葉に表わせない百合。強引な雪美の
誘いでデートする克也。スケバンに奪い取られた雪美の腕時計を取り戻して怪我をした二郎が、雨の中、雪美の帰りを
待っていた。





やがて夏。甲子園に向かって予戦開始。青秀野球部は勝ち進み、準決勝。相手は、宿敵、健太郎のいる武南高校。土
壇場、倉橋のサヨナラホームランで武南を下したが、健太郎の死球を受けた倉橋は、決勝戦で投げられず、青秀野球
部の甲子園は今年も夢に終わった。





枯葉舞う秋。百合と雪美の間を揺れ動く克也の心。倉橋と唐沢の熱い友情のアドバイスに従い、克也は自分の気持ち
を雪美に伝える。克也を忘れるために遊びまわる雪美。それを見守る二郎。枯葉舞う中、二郎の温かな心が雪美の胸
の傷をいやし、抱き合う二人だった。





一方、健太郎にプロポーズされて悩む百合は、克也に相談するが、彼には百合の真意がわからない。そして、百合の
真意を知った克也は、健太郎と百合のいる喫茶店へ全力疾走する。その途中の公園で克也は向こうから歩いてくる百
合と出会う、立ち止まり、見つめあう二人。克也は百合に「恋人宣言」をする。克也の首に百合の手編みのマフラーが
かけられる。その冬、克也と百合は、もう寒くない―。








レビュー


冒頭の文化祭のシーンで使われているフォークソング調の曲は芹澤廣明氏によるものなのだろうか?ちょっと気になり
ます。





アニメ「ナイン」における挿入歌はキャラクターの心情をよく表わしているのだが、「私のYong Boy」は数ある挿入歌で
も傑作中の傑作で、ラストシーンは大いに盛り上がった。倉田まり子ファンとしては、もちろんデュエット・バージョンを推
します。





まり子さんの中尾百合役も2作目ということで、より上手くなっている。特にこの作品の百合は心の綾を表わす所が多
いので、とても良かった。





アニメ作品の百合は原作に比べ、ややおとなし過ぎる感がある。作品は次の「完結編」で終了したが、もう少し作品数
が多ければ原作のエピソードが生かされ、各キャラクターの掘り下げもより出来たと思う。








エトセトラ





ナイン−その音楽世界


「ナイン・シリーズ」に躍動感とセンチメンタルな音楽を提供した芹澤廣明氏、中森明菜の「少女A」やチェッカーズの初
期のヒット曲でその名をご存知の方もいらっしゃると思います。





芹澤氏はその昔、NHKの「スタジオ101」(1970年〜1974年放送)という歌番組で活躍していたそうです。私も小学
生高学年の時に見た記憶があります。芹沢氏は映画、アニメ、歌謡曲に多くの作品を提供していて、「ナイン」以降も
「タッチ」や「陽あたり良好!」等のあだち充作品の音楽も担当しています。





シリーズ共通で、エンディングに使用された「真夏のランナー」は曲タイトル通り、疾走感に溢れ、「人は誰も真夏のラン
ナー、青春の重すぎる荷物かかえたまま・・・」の歌詞も心にしみる名曲です。「陽あたり良好!」には「真夏のランナー
II 〜愛が眠る日まで〜」という同一の曲で歌詞が違う歌があるそうです。





「歌手・倉田まり子」の歴史において、この「ナイン・シリーズ」は今後も重要なポジションを占めることは間違いありませ
ん。





「ナイン」こぼれ話


当サイトは倉田まり子のHPであるので、不参加の「完結編」(1984年9月5日放送)については作品解説、レビューを
設けませんでした。悪しからずご了承ください。





「ナイン・シリーズ」は3作品まとめて再放送されるケースが多い。最初の再放送は1984年12月24日〜26日の3日
間であった。現在でも時々UHF(関東地区の場合)で放送されることがある。





月曜ドラマランド「野球狂の歌」(1985年1月放送 主演 斉藤由貴)のテレビCMが1984年の年末から流れたが、そ
のBGMは「真夏のランナー(倉田まり子)」であった。テレビからこの曲が流れた時は一瞬耳を疑ったが、数日後、別
のBGMに差し替えられた。そりゃ、あだち充と水島新司では、同じ野球という題材でも世界観違いすぎますよ(笑)。





同じく月曜ドラマランド枠で「ナイン」実写版(1987年1月放送 主演 浅倉亜季)が放送された。小生見ていませんの
で、内容は分かりません。


デビュー時のまり子さんなら、実写「ナイン」で中尾百合役もOKだったのではと思います。実際は企画が起きる時期
と、その時に年齢的に適したアイドルが選ばれるというタイミングがありますからね・・・





アニメのDVDを!音楽・歌曲のCDを!


DVDも現在発売予定は無さそうです。


もし発売されるなら、ミュージックトラックを設けてもらいたいです。、アニメの画像を見ながら、劇中の歌やBGMを独立
したトラックで聞ければより楽しめます。それと、出来れば「TV版ナイン(ナイン1)」も収録した4作品セットになれば最
高ですね。





アニメのCDの再販やリマスターが盛んな昨今、この「ナイン」についてはシングルA面2曲が僅かに「倉田まり子・コレク
ション」でCD化されただけである。また、「真夏のランナー」は最近発売された「超空想ベースボール」という野球アニメ
のオムニバスCDにも収録されている。





参考資料


サウンドトラックレコード・ライナーノーツ


レーザーディスク解説書


あだち充 DATABASE(管理人 Jerryさん)






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マリコスト・ルーム倉田まり子